元編集者のナゾとき☆日記

ミステリー系のTVドラマ・映画・漫画の感想や生活実感コラムをつれづれなるまま書きます。

file75「三倍楽しめる」ドラマその1「ミステリと言う勿れ」

自分史上(人生60年超)、かつてないほどTVやVOD(動画配信サービス)に漬かっている、おばはんです。今季ドラマもすでに終盤ですが(残すところあと1−2回)、とりわけ気になるドラマ2つについて、書きたいです! 

◆文章が長くなってしまったので、ドラマ1本分の感想だけでUPさせます!

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●「ミステリと言う勿れ」(フジテレビ系列、月曜、午後9時〜)

菅田将暉さん主演で視聴率も高いらしいので、ご存知の方も多いでしょう。原作は漫画、月刊「フラワーズ(小学館)」で連載中です。↑上記の写真は、「フラワーズ」とじ込みの記事(1月号だったかな。)。原作者と菅田将暉さんの対談が載ってました。

主人公は、天パで、見た目も中身もやや頭でっかち(失礼)な久能整(くのう・ととのう)くん。いつも「なぜ?」が気になります。彼は次々と事件に巻き込まれながらも、優れた観察力と洞察力で、思ってもみなかった事件の真相(深層、でもイイかも!!)を探り当ててしまいます。

ミステリといえば、誰が犯人か(WHO)、トリックはどう仕組まれたか(HOW)を明らかにする物語が多いように思いますが、この作品は少し違います。整くんは「なぜ、彼はそれを行なったか(WHY)」を中心に真相(いや深層?)を解き明かします。

でも、整くんは「すねかじりの大学生」※1で、専門家(警察官や弁護士、検事、判事)でもありません。江戸川コナンくんほどの学生探偵でもありません。ただ、犯罪者に対して断罪することもないし、むしろその犯罪者を涙ぐませるほどの共感を示すことさえあります。※2

第八話・第九話は、整くんの恩師の同級生が主宰する別荘でのミステリー会が舞台でした。架空の物語から犯人を推測できた整くんは、5年前のストーカー殺人事件の背景や、別件のストーカー殺人事件の幇助についてある人物の関与を明らかにし、さらには計画途中の集団殺人事件を未然に防ぐという作業まで、やってのけています。今までの探偵小説ではなしえなかったことじゃね?? とか思い、見ながらウキャキャ、でございます。

いかにも犯人っぽく怪しい人々がたくさん登場して、その人たちが一堂に介したところで探偵が推理を話すシーンは、アガサ・クリスティエルキュール・ポアロっぽいです。整くんの脳細胞もまた「灰色」なのかもしれませんね♪

この「別荘」に集った男性陣のうち、3人は高校の同期です。この「同期」っていうのも複雑な感情をもたらしますよね。特に同性の相手に対しては。

ドラマでは、高校時代に生徒会長で陸上部のスターだった男が、今では「役所勤めで、仕事は頭打ち。親を自宅で介護中」と自嘲的に言い、続けて同期である[整くんの恩師]については「好きな仕事して、成功して、あんなイイ女と付き合って・・」と妬ましげに評します。(註/原作の漫画では「あんなイイ女」ではなく、「あんなキレイな彼女もいて」となっています。たぶん、ドラマの脚本家は男性、漫画の作者は女性だからかな。男性の発言としては、前者の方がリアルです。個人的には「キレイな」の方が、女性の品格を尊重していると思いますけどね)

私も、高校の同窓会に参加したことを思い出しました。

同窓会に出席して、まずアンテナを張り巡らすのは「コイツは誰?」が分かれば、次は「コイツには、マウント取れるか取られるか?」を、数分で察知しちゃう。男性の場合は社会的な地位とか立場(装いとか雰囲気とか)、女性の場合は見た目(装いも含む)が中心かな。

その席には、高校当時、トランジスタグラマで可愛くてモテまくっていたNちゃんが、近くにいました。彼女は、中年すぎてふっくらしたおばちゃん体型になっていたばかりか、保険の外交員やっているみたいで、同窓会でも保険の勧誘をしまくっていました。少し男性諸氏が敬遠してしまっているようでした。それを見て、なんか、ゆとりないのねと、私は上から目線になりました(やな奴です、私)。

当時も今も、別に彼女に恨みがあるわけではないけれど、かつて私は相当、劣等感に苛まれていたようです。見た目も、性格も、Nちゃんは本当に可愛くて、誰にでも好かれていましたから。当時は、その感情を認めたくなかったんだなあ・・・

やっかみ、ひがみ、嫉妬、羨望というものは、言語化すると、案外、気持ちが煮詰まらずに蒸発しそうです。

ドラマ九話で判明した犯人氏も、自分の弱みを認識して誰かに話せたらよかったのに。

男性は、弱みを話せない傾向があるように見受けます。特に同性にはね。

 

さて、最後に。このドラマの魅力は、敵役(犯人)に、ものすごく上手な俳優さんをキャスティングしていることです。見応えがあります。

恋愛ドラマや青春群像ドラマでスタートした俳優さん(菅田将暉さんは仮面ライダーでTVデビュー)は、同世代の中で演じる限り、顔だけで主役でいられるかもしれません。でも、たぶん40歳前に演技をもう一度学んでおかないと、メインの俳優としては生き残れないんじゃないか、と思います。その点、このドラマのように、次々と圧倒的な存在感を示すベテランの俳優さんたちと対峙できる(cf・家族ドラマとかだと、若いもんは従属する立場になり、下から目線になっちゃうので「対峙」とは言えない)のがすごいです。

菅田将暉さん、また成長しちゃいますね、きっと。今年は、大河ドラマもご出演のようですし。

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↑来週は、ライカさん中心の回かな。ライカの名前の由来、千夜子さんとライカさんの関係が分かると、いっそう切ないです。(C)フジテレビジョン小学館田村由美

 

※1 「すねかじりの大学生」と大隣署の警察官の前では言いましたが、額面通りには受け取れません。彼が時折「もう大人なんだから、ダンゴ虫になっちゃダメ」とうずくまる姿を見ると、何か強大な悩みを抱えていた経験があると想像できます。コミックスでは、強度のストレスを抱えた整くんの母が「ごめんね、何も感じられないの」と、幼い整くんに謝るシーンがあります。めちゃくちゃ切ないです(多分ドラマでは、ここまでたどり着けないかな・・)

※2 ドラマ第一話では大隣署の刑事、九話目では恩師の同級生が、それまで抑えていた感情を爆発させ、本音を言い、思わず涙ぐんでいます。

 

 

追記I

残る回は、ガロくんが再登場する「ジュート編(←勝手にタイトルつけてます)」かな。

ぜひ劇場版「ミステリという勿れ」を作っていただき、そこでコミックス10巻あたりの「交換誘拐事件(←勝手に命名)」などを取り上げてくれ!!と切望しております。価値観がひっくり返るエピソードです。

この作品に、余計な恋愛モード(ドラマでは、風呂光刑事がほんのり整くんに好意持っておるようですが、それを助長するならライカさんとのほんわかデートはどうしてくれるんじゃっ)は不要だなあ。

今月号のフラワーズで、ライカさんは、整くんに対して、素敵な言葉をかけてくれていますよーー! こんなこと言われたら、本当に生きててよかったと思えます。整くんにとっては、喜和さん亡き後、初めてキモチが救われる相手かな(読んでね)。

 

追記II(2022/03/10)

TV局は、早々に、このドラマの続編(第二シリーズ)と映画化を発表したようです。映画版はオリジナル脚本とのことですが、原作の漫画のセリフやテーマに込められた作者のメッセージを尊重して制作してほしいなあ。

このドラマが始まる前、一種の番宣でクイズ番組に出演した「ミスなか」チームを見かけました。風呂光刑事を演じる女優さんが、菅田将暉さんの隣に座っていたので「あれ?そこはライカさんじゃないの?」とか思ったのですが、、。そのときは、謎の美女ライカさんの演者が未発表だったからと解釈してました。

映画版ではぜひ、ライカさんの重要度を増してください。ぜひそのときは、カツラではなく、地毛でロングヘアに。今のTVドラマでのライカさんの髪と化粧は、ちょっと浮いてます。うなじあたりの赤毛が浮いてて、もろにカツラっぽいし、ライカさんの口紅が濃すぎる。千夜子さんとの区別かもしれないが、仮にも入院患者です。もそっと心配りを。