元編集者のナゾとき☆日記

ミステリー系のTVドラマ・映画・漫画の感想や生活実感コラムをつれづれなるまま書きます。

【推し!ミス31】コミック本の「さん歩」を提案!例題は「ミステリと言う勿れ」9巻で

時々、ドラマや映画や漫画の感想をこのブログに書き散らかす、おばちゃん60代です。でも、その作品を「読まない」「見ない」「興味ない」の”3ナイ”ビトにとっては、少々退屈あるいは苦痛ですよね? 今回は、そんな”3ナイ“ビトにも、少しは「フゥン」「へぇ」と楽しんでもらえそうな、記事の書き方にチャレンジ!いたしやす。

題して、ほんの「さん歩」!です。一歩、二歩、三歩で楽しめる【裏読みのすすめ】。制作サイドの人々は、どんなことを考えて作ったのか?を探るアソビです。

例題として、最近刊行された「ミステリと言う勿れ」9巻を取り上げます。

 

▶︎最初の一歩/表紙カバーと帯◀︎

表紙(表紙カバー)は、読者さんとの接点、大切な顔です。現実世界でも、誰か(何か)と出会ったら、やっぱ、顔が重要ポイントでしょ(^o^)。

「ミステリと言う勿れ」9巻は、帯までついてます。そこに「900万部突破の話題作」の文字は小さく、「TVドラマ化 決定」の文字の方が大きい。感嘆符「!」が5つもついているくらいですから、いかにここを強調したかったかが分かるというもの。しかも,主人公の久能整(くのう・ととのう)くんに扮した菅田将暉さんの顔写真入り・・!!!!!

帯をつけるのは「新刊」の目印でもありますが、ここは作者買い(=この作者なら買うという固定ファン)以外のお客さんや「掲載時は知らなかった」浮動票をどれほどキャッチできるか、の勝負どころです。通常、帯にはよく著名人や大御所漫画家の推薦のコメントが入ってたりします。

ついでに言うと、平置きされている期間が、旬の時期。コミックス本の「顔」が見える期間のうちに、将来を嘱望される=売れ続ければ良いけれど、売れ行きが思わしくない場合は、早々に、棚差し=背表紙しか見えない世界に移動されてしまうのです。

なお、9巻目にして「900万部突破」なら、各巻100万部平均ということになります。大体「第1巻が売れて、2巻目以降は少しずつ下がる」のが習いなので、1巻は100万部以上印刷したってことになります。

1冊につき100万人の人が読んだんだ、と思うと、、すごくないですか? 例えば、政令指定都市である仙台市の人口が約108万人(日本統計年鑑、平成28年版)なので、そこの全市民がこの一冊を読んだ・・というレベルです。←誤解のないように。例えですからね。

 

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 ↑「ミステリと言う勿れ」9巻 定価499円(本体454円) 2021年7月9日刊行 小学館 フラワーコミックス

 

表紙カバーを見て推測アソビをすると、

1.各巻、主人公の顔がメインなのに、9巻は船上の久能くん全身。おそらくは「ドラマ化」の話がまとまり、主役俳優の顔写真が使えると分かったから、表紙の絵はバランスを取って全身にしたのでしょう。

⒉最初の1巻から現在に至るまで、表紙絵の主人公は全て、冬の服装。2018年5月刊行の第2巻も、主人公の顔アップで冬服。2019年9月刊行の5巻は、なんと「クリスマス」の絵になっています。ミステリは思索っぽいから、秋冬モノ? あるいは、久能くんが幼少期に受けたchild  abuseの痕跡をカモフラージュするために、冬服(特にマフラーが欠かせない?)説もあります。

 

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↑こちらは「ミステリと言う勿れ」第1巻 2018年1月10日刊行 小学館

 

ミステリと言う勿れ 5

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↑「ミステリと言う勿れ」5巻 2019年9月刊行 小学館/ミドリと赤の配色はクリスマスを連想させます。実際に書かれている小物もクリスマスのオーナメントだし。

 

▶︎二歩目/肝心の中身を探検 ※ネタバレ有り

 9巻に掲載されているのは4つのepisode。「双子を見分けてほしい」と言う依頼の解決編(※久能くんが、危ない目に遭ってます。でも突然、船上で犬堂ガロくんが登場しちゃう!のが、表紙カバー裏)、またガロくんが姉の死の関連を探って忍び込むイケメン心理カウンセラーの自宅での話、青砥刑事の新episode(※離婚した妻に引き取られた娘の身が危うい、みたいです)です。

内容的には、途中から読む人にとっては、ちょっとハードルが高いです。キャラがわかりづらいし、何より主人公自身の魅力?癖?が分かるのが1巻なので、そちらから入った方がいいかもです。1巻のメインは、本人が容疑者と間違われるシーンが続き、取調室でいろいろ刑事さんたちに語っちゃうところが面白いから、です。

久能くんは、啓治さんたちのシャツの皺なども観察していて、それがもとで夫婦喧嘩も推測しちゃうし、喧嘩の根源にあるものも探り当てちゃう。「ゴミ捨てって、どこからだと思いますか・」なんて問いかけには、思わず、うーむ、ですよ。

(セリフ長いから、演じる俳優さん、とても大変そう・・・)

絵柄的には、9巻では登場人物の顔にスクリーントーンっぽいものを貼る(モノクロ印刷でグレーっぽくなる)のが増えていて、独特の雰囲気出してるなあ、と思います。

なお、この作品は数年、続けて「このマンガがすごい!」女性編の上位にランクインされています。選出対象のコミックスは「累計10巻以内のコミックス本」なので、年2−3回の刊行ベースなら、最大3−5年程度、受賞のチャンスがあるわけです。もちろん、各巻ともそれなりの実績がないと対象にはならないと思いますけど・・・。

さて。内容に関しては1箇所、気になるところが。最後のepisodeで、青砥刑事が「俺が首をくくればいのか」っていっているのは「???」。それは「腹をくくる」の間違いではないのかしらん???

 

▶︎三歩目、さん歩/ずずズィーっと「おー奥」へ◀︎

奥に、ずずズィーっと進んでいきますと(後ろからめくった方が早いわ)、奥付(おくづけ)というページがございます(下記写真の左側のページ。右側は、今回特別の「たむたむタイム」←作者の田村さんが書いた欄外コラムみたいなもの)。

この本の所属というか、出所、いわば出生証明書みたいなもんが記載されています。地味なページですが、編集者など制作サイドは気を使うところです。

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 タイトル、発行日、著者、発行者、漫画の掲載月号、発行所、そして印刷所。

編集者が「連載担当」と「単行本担当者」で違う人になっているのは、最近のシステムではないかと思います。社員編集者と、社内に常駐する(?)スタッフがいるのかな?

印刷所は、たぶん、販売部などのセクションが、印刷会社さん各社に見積もりをとって決定しているのではないかと思います。印刷所さんを決定する理由は、見積もり金額だけでなく、その出版社内でのいろいろなパワーバランスがある・・かもしれません。まあ推測ですけれど。

「ミステリという勿れ」の印刷を担当する図書印刷さんは、二大大手(凸版、大日本印刷)のうちの凸版印刷さんの子会社。特にコミックスの印刷についてのシェアが高いと言われています。

(cf、コミックス本「鬼滅の刃」は、のべ一億部を発行したと言われていますが、その印刷は共同印刷さんでした。すごい冊数ですよね)

 

さてさて。ほんの、さん歩。昨今人気のコミックス本を例題に、ちょこっと分析?やってみました〜。読んでいただき有り難うございました。