元編集者のナゾとき☆日記

ミステリー系のTVドラマ・映画・漫画の感想や生活実感コラムをつれづれなるまま書きます。

file 26.「数学コンプレックス」は、数学ヒッスの夢を見させるか?

▶︎不思議と、数学に縁のあった日◀︎

1日のうち、数学に関連したものに、3度も出逢った。数学的にいうと、これは偶然ではなく、なんらかの必然性があったってことかもしれない。ひとつ気になることがあると、その他の事象・事物も、つい関連づけてしまうものだから。

例えば、出産後の女性は、街を歩けば赤ちゃんとママが目につくようになるし、テレビを見ても同じような親子に目がいく。「こんなに世の中には、乳児と母親が多かったのかしら」と考えがちになる。・・・ように思う。 ←これは私の個人的経験。

 

さて。

たまに見ていたドラマ「相棒」テレビ朝日系列、再放送)だが、その日のエピソードは、サヴァン症候群※1の青年の死(殺人)をめぐる事件だった。優秀な兄に保護され扶養されてきた弟が、2年前の偶然の事故により突然、数学に抜きんでた才能を見せるようになった。それで、彼と知り合った人々の心がざわざわし始める。大学教授にもその能力を認められていたのに、大学入試問題をめぐって騒動に巻き込まれ、不本意な死を迎えてしまった。それまで彼を見下していた人間の、いわれなき嫉妬、やっかみなどの感情が渦巻いていたのだった。※犯人は、記載しません。

サヴァン症候群精神障害や知能障害を持ちながら、ごく特定の分野に突出した能力を発揮する人や症状を言う。(厚生労働省e-ヘルスネットより引用)

 

テレビを見終えた夕方、夕食の買い物ついでにふらり立ち寄った書店では、おすすめ本コーナーで「数の悪魔」という本が目についた。

この本は、昔、小4だった息子に「読んでみたら?」とすすめた一冊。予想以上にハマった息子は、塾友と帰る道すがら、この本に出てくる算数(数学)問答をやり取りするようになった。

算数への苦手意識を薄くしてくれた名著であり、「知ることは面白いこと」というのが肌に染みるようになった、きっかけの本。10歳以上なら、老若男女がそれぞれ読んで楽しめる名作だと思う。

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ハンス・マグヌス・エンツェンスベルガー著、丘澤静也訳、晶文社、1760円


夜は、VOD(動画配信サービス)で、ドラマシリーズ「numbers〜天才数学者の事件ファイル」を視聴した。実は、数日前からこのシリーズにハマっている。それが、数学への呼び水になったかもしれない(私は数学は不得意だけど)。

兄ドン・エプスは優秀なFB I捜査官、弟チャーリー・エプスは(13歳で大学入学するほどの)天才数学者。この2人が、疎遠だった間柄を徐々に軌道修正させ、難事件を一緒に解決していきながら、お互いに成長していく物語。

父親との何気ない会話、チャーリーと親しいラリー(物理学者、大学教授)との会話も楽しい。男の友情とか兄弟や父子関係は、共感得やすいのかな。

製作総指揮は、リドリー・スコット(映画「ブレードランナー」「エイリアン」「ナイル殺人事件」などの監督)。シーズン1〜6まであり、1話完結で全118話。ストーリーには毎回、気鋭の数学者が監修に入っていて、紹介される数式は本物とのこと。フィボナッチ数列黄金比ゲーム理論などが推理につかわれ、知的好奇心を刺激される! わかりやすい数学の授業を見ているようで、テンポも軽快で(犯罪→FBIの捜査→教授たちadviser加わって分析→逮捕)、心地よい。

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↑この作品が見られる動画配信サービスは、AmazonプライムとUーNEXTとHulu(2021年5月調べ)。

 

▶︎数学コンプレックスの形成◀︎

さて、私は数学が苦手なので、数学ができる人に憧れる。昔から、それで理系男子と付き合ってみるが、挫折してフラれることも多かった(笑)。数学ができない自分は、今も、数学のできる夫や息子に引け目を感じる。

そんな劣等感(inferiority  complex)が決定的になったのは、高校時代だ。

かつて私が在籍していた公立高校は、「文系を受験する高3も全員、数3まで必修」「一浪=ヒトナミ、人並み」「部活動その他は、高3の1学期まで目一杯やれ」という方針。当時、受験のための補習は一切なかった。クラス担任との進路相談も「どこ受ける? あ、そう。頑張ってね」だけ。手取り足取り、本命と第二志望、第三志望はココで考えたらどうか?なんて実用的なアドバイスは、これっぽっちもなかった。

そんな状況下で、だあれも味方じゃなかった(母親は大学進学に反対してた)私は、受験に必要のない科目をほとんど無視した。が、数3の担当教師はそうさせてくれなかった。授業中の生徒が「内職」していると、チョークが飛んできた(いたのよ、昔はそういう教師)。サボりも許さない。代返なんてしようものなら、代返した生徒もそれを頼んだ生徒もマイナス評価となり、補習の対象(補習は大学受験に向けたものではない)。また、定期考査の得点で20点以下は赤点で、追試の対象だった。お目こぼしは、ない。

そんなある日のこと、高校最後の体育祭の準備に追われていた私たちの耳に、校内放送で、数3のN先生の声が聞こえた。「××、△△、〇〇、・・・・・□□(私)は、追試を行うので、3ーAの前に来るように」。10数名が、呼ばれた。

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当時、私は体育祭準備の中心メンバーのひとりで、毎日、朝も放課後も下級生を指導するような立場にいた。それが、校内放送で「追試メンバー」として呼ばれた。それは、かなり恥ずかしかった(文系科目だったら負けないのに!)。

結局、数3は五段階評価で2。小学校以来、成績表でそんな数字を見たことはない。

それが、ぬぐいようのない数学コンプレックスになった。

 

▶︎「Numbers〜天才数学者の事件ファイル」の魅力を探る◀︎

まだ全話をみたわけではないが、主人公の2人がごくまっとうに、心身ともにタフな優等生(兄ドン)+やや偏屈で対人関係にはやや苦労しているが愛すべき天才(弟チャーリー)という組み合わせで、「主人公」感はばっちり。

いかにもヒーローっぽいところはあるが、適度に弱みもあって、優等生と天才は「過度」になりきらずに止まってくれている。母親をガンで亡くしたという哀しみをかかえているが、悲嘆に暮れてうずくまっているわけではなく、少しでも前進しようとする。状況変われば、適応していかなきゃね的なポジティブさが、清々しい。親しみやすい。

また、最初は、弟の捜査アドバイザーぶりに懐疑的だった友人のラリー、はらはらしていた父アランも、好意的な見方をするようになっていく。何より素敵なのは、兄弟が次第に打ち解け、認め合い、尊敬しあって、最強のバディっぷりを見せてくれることだ。

 

さらに、父は「二人ともに、世の中に役立つ仕事をしている。誇りに思う」と語る。視聴者として見てて、親はこうありたいね、って思わせる。

次男にかかりきりで妻に放って置かれた夫(父)は、当時を振り返って「あのときはやばかった、結婚生活の危機だった」と正直に言うし、「次男を守るために、ついおまえ(長男)をかまってやれなかった」と謝りもする。

親だって最初から完璧な存在だったはずもなく、試行錯誤しながら親になっていくのだと、この作品を見るとよく分かる。父アランは、自分はこう考え、こう選択したと、きちんと自分に回帰して、息子たちに語る。世間が、とか、時代が、とか、死んだ妻が、とかを判断の理由にしない。そういうところが、潔い。

日本人の親が、いや私の親が、しばしば「おまえ(子ども)のために、✖︎✖️したんだよ」と恩着せがましく言ってきた(少なくとも、私にはそう聞こえた)のとは、大違いかな(笑)。

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人間の描き方がチャーミングなのはもちろんだが、やはりこの作品を際立たせているのは「数学の論理を、犯罪捜査に組み込んで、事件の突破口を見つける」ところかな。

たとえば、チャーリーは「噴水から出る水滴が次にどこに着水するかを推測するのは難しいけど、着水した地点から辿っていけば、噴水の位置が分かるよ」と言って、病原菌ウイルスがどこで巻かれたか、そのスタート地点を推理し、「ゼロ号患者」を特定し、ついには犯人までたどり着くことに、成功してしまったりする。

 

楽しいドラマなので、ぜひ!(私もシーズン7まで見届けたいと思います!)

 

 

 

 file 26「数学コンプレックス」は、数学ヒッスの夢を見るか?

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※今回はミステリ以外の作品も含めて紹介しているので、記事のカテゴリーを「サシスセソ事件簿」との兼用に。