元編集者のナゾとき☆日記

ミステリー系のTVドラマ・映画・漫画の感想や生活実感コラムをつれづれなるまま書きます。

file 35「秀才キラー」のいた夏〜塾の思い出〜

ヒッキー生活継続中ですが、ボケ防止を兼ねて1日一回は外出を心がけています。と言っても、たいていは夕方、近所に買い物に出る程度。すると、小学生の下校や、お稽古事・塾への出発風景などを見ることができます。

ちょうど今頃の季節、6月は〝子どもの塾代に驚いた記念日”だったなあ。夏期講習の費用に「うひゃあ」と声が出たのを思い出します(中学受験、小6、四教科、大手集団塾)。当時、約20万円でした。

まあ、でも夏期講習は、確かに重要なターニングポイントだったかな。

☆カゲの声:検索したところ、今も、その塾の夏期講習は同額程度と判明。企業努力ですね。まあ、これ以上の金額になると、保護者が二の足踏むとか、CS(顧客満足度)が低下するとか、あるのかも??

 

◆塾友は「秀才キラー」◆

 夏期講習には、通常期の塾生でない生徒も加わります。そこでの出会いが、受験する学校とか志望校選定に影響することもあるようです。

以下、友人知人の保護者同士の会話、あるいは小中高生だった子どもたち(うちに泊まりに来た子も含む)から当時聞いたネタをもとに、プライバシーに考慮しながら、書いてみます。まずは2題。目指すは、フィクションとノンフィクションの中間ってことで♪♪♪

 

◇episode 1「隣りのコの、好きなもんが好き」

中3の夏、Y子は初めて、電車に乗って通う塾の夏期講習に参加した。それまでは、近所の、歩いて通える「ショボい(本人談)」塾しか行ったことが無かったので、ちょっとドキドキしていた。近所では優秀で通っている自分が、違う塾ではどれくらい通用するのか、知りたくもあった。

授業が始まる前、大きな教室には、知らない学校の男子中学生やおしゃべりに夢中な他校の女子中学生がたくさんいた。Y子が少しクラクラしたのは、単に、夏の暑さや教室のオンボロな空調のせいだけではなかったように思う。

顔見知りを探した。自分と同中のM美は、Y子がそこの塾に通うと決めた理由になった子だ。最近やたらと国語の成績が上がっている子で、Y子にとっては「ライバルに浮上中」の子、、。見渡すと、彼女は長身の男子中学生と話をしていた。

「おはよう、M美」とY子が近寄って声をかけると、「あ、ホントにこの塾にしたんだね」とM美。

一応返事らしきものをしたM美だったが、すぐに男子中学生の方に向き直って、話を続けたい様子だったので、やむなくY子は、隣で話を聞くことにした。

「ここの塾の国語の先生がすごくイイって、私が宣伝しちゃったから来る子もいるのよ。あなたは、なぜこの塾に来たの? ここ、初めてだよね?」と、M美。

ノッポの男子中学生がボソボソっと語ったのは「親の転勤で、急にこっちに来ることになり、急遽、塾を探した」らしい。地方の中高一貫校の男子校にいたので、「女の子と話すのは久しぶりだ」と言い、彼(Fくん)は少しだけ笑った。

夏期講習の間、3人はよく一緒に並んで授業を受けた。Fくんは英数国理社の全科目まんべんなくできた。Y子とM美は2人とも数学が不得手で、Fくんに教えてもらうようになった。

M美とY子は、不得意科目は一緒だったが、見た目は全く違っていた。身長差が10センチ以上あり、Y子がM美に話しかける時は、いつも見上げるようにしなければならなかった。Y子にとって、そうした視線の向きは、キモチ的にも影響していた。

込み合った電車だと、小柄なY子はいつもヒトの背中と背中の間で押しつぶされそうになる。けれど、長身のM美はいつもオトナと同じくらいの高さで、ラクそうに呼吸している。そんなことですら、Y子は腹が立っていた。

立っていると、いつも見下げられているようで、愉快ではなかった。屈辱的にさえ感じ、内心「身長以外のことなら、絶対勝ってやる」と、Y子は思っていた。

機会は、意外と早くやってきた。

秋になり、Fくんは私立の難関男子校を目指し、別の塾に移った。M美は、さかんに夏期講習を受けた塾に一緒に通うよう勧めていたが、聞き入れてはもらえなかったようだ。そして、Y子は、、、Fくんと同じ塾に移った。Fくんに誘われたからだ。

「じっと話を聞いてくれるY子さんとなら、勉強一緒にできるから」と。

M美に勝った、とY子は思った。

M美が密かにFくんを好きらしいのは、はたで見て感じていた。M美が親切だと思ってやっていることを、Fくんが余り嬉しく思っていないのも、分かっていた。だから、そんなときはさりげなく「Fくんだって、都合があるんじゃないのかなあ」と言って、M美のお節介からFくんを開放してあげた。分かっていないのは、M美だけだ。

実はY子が、M美の好きなものを奪うのは、これが最初ではない。M美と同じ中学で、同じ運動部に所属していたY子は、M美がそのクラブの部長を好きなのに気がついていた。M美が部長に告白して、玉砕したとき、Y子がM美を慰めた。M美はいたたまれず、その運動部を退部した。

その裏で、部長から「好きです」とコクられていたのは、Y子だった。

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◇episode 2「刺客と呼ばれた女」

 公立高校No.1と評判の学校に通うS男と、某国立大学附属校(共学)に通うK子は、高2の夏期講習で知り合った。塾の小テストでも同じくらいの成績で、お互い気になっていたとか。最初は彼が「一緒に勉強しよう」と声をかけたことがきっかけで、塾の補習室・公立図書館に行ったり、公開模試の帰りには「分析」と称してお洒落なカフェ(渋谷区松濤にあるDなど)でプチ・デート♪ していた。

模試からなかなか帰ってこない娘を心配した母が、寄り道先について本人にヒアリングした結果、分かったことだった。「大丈夫なの、そんなことで」と母が言うと、娘は「大丈夫、大丈夫」と答えた。

S男はそれまで通う塾を決めていなかった(校内で受験用の補習がみっちりあるため、塾は不要と思っていた)が、K子と知り合ったのをきっかけに、その塾に定着するように。2人の「勉強会」とプチデートは、高3の冬まで続いていた。

2人とも第一志望はT大。国立大学の受験前には私立のK大などを受ける予定だった。

2人はK大に合格した。が、T大(前期日程)は共に不合格。

S男は「一緒にK大に行こう」とK子に言ったが、実はK子は違う未来の可能性も考えていた。K子は、すでにH大(後期日程)に出願していたのだ。

T大の合否が分かった翌々日にはさっさと飛行機に乗って、受験して、合格してしまった。

2人には、別々の桜が咲いた。

後日、K子の母は、娘の通った学校の保護者から「公立No.1の高校から国公立大学の進学実績を1人分削った、『刺客』だねって言われた」と苦笑していた。

 

 

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