元編集者のナゾとき☆日記

ミステリー系のTVドラマ・映画・漫画の感想や生活実感コラムをつれづれなるまま書きます。

file 51「寿司屋のカウンター席」の呪縛

今週のお題「寿司」

生まれ育った家では、昔、来客があれば即、江戸前の握り寿司の出前! 当時、私はまだお子ちゃま舌で、タマゴや海苔で巻いた一部の寿司しか食べられず、母親から「お寿司屋さんのカウンターには、まだ座れないわね」などと、からかわれていました。

「寿司屋のカウンター席」は、ご常連さんとかが座って、注文しながら食べる「セレブ席」のイメージです。

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いやまあ、「寿司」が美味しいかどうかなんて、子どもにとっては遥か彼方の問題で、ただただ「寿司」=「お客さんが来れば食べられる、非日常、ゼイタク、ご馳走、高級なごはん」のイメージを、持っていました。

たぶん、そのイメージは、私が10代後半〜20代前半くらいまでのビンボー暮らし(親が離婚して、母親に引き取られた私には、出前も外食も望めない、ひっそりとした生活)の間に、より強化され、大いなる劣等感あるいは果たせぬ願望となって、心の奥底に潜んでいたように思います。例えば・・・

バイトに明け暮れていた大学生時代、家庭教師をやっていたおうちで、初めて「手巻き寿司」というのをご馳走になりました。たくさん並べられたお刺身を、大きな海苔で、好きな具を選んで食べられるのは、本当においしく幸せでした。さすが公認会計士さんのうちは違うなあと思いました。

社会人になってまもなく、大手出版社の女性編集者と親しくなって、お互いの実家にも泊まりに行くような間柄になったあるとき、「あなたのおうちの様子じゃ、寿司屋のカウンターなんて座って注文したことないでしょ」と言われ、瞬間、何も言えなくなりました。自分の家のビンボーさを当てられたようで、恥ずかしくなったのです。何も言い返せませんでした。彼女の実家は、地方で電気店を数店経営する社長さん一家でした。

人生初のマウントは、ズーンと重く、心にのしかかりました。

今なら、いろいろ言い返せそうですが、当時は「ナンも言えねぇ」状態。ボキャブラリーまで貧困で、ひ弱な私でありました。

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そんな過去への復讐というか、その女性編集者からの指摘以来、「寿司屋」「寿司屋のカウンター席」に、こだわるようになりました。バブル当時なら、リッチな友だちに、銀座・青山・赤坂・神楽坂などの寿司屋さんに連れて行ってもらったり。バブル後に自前ランチするなら、老舗の寿司屋を選んだり。結婚して、子どもにも寿司の旨さを伝えようとしました(子ども達は、あまり寿司が好きにはなりませんでしたが・・)。

徐々に、「ビンボー時代を見返したい」みたいな呪縛から解放されることができたのは、もしかすると、回転寿司のおかげです(笑)。

回転寿司なんて、と心のどこかで思っていたのに、出張先の富山県や北海道で味わった、回転寿司の美味しかったこと! 種類豊富で、イカは透き通ってて、みたこともないお魚の刺身があって(のどぐろ、初めて富山で食べました)、そのくせお値段もそこそこで、客として行くとき妙にツウぶったりエラソーにしなくてよくて、幸せ!

回転寿司は、「寿司屋のカウンター席」だらけじゃん!リッチな気分の停留所です♪

と、最近、悟りました。おひとり様でも行けるところが、また、よろし♪