元編集者のナゾとき☆日記

ミステリー系のTVドラマ・映画・漫画の感想や生活実感コラムをつれづれなるまま書きます。

【推し!ミス21】ドラマ「エレメンタリー」season1に、どっぷり!

「エレメンタリー (Elementary)」は、シャーロック・ホームズの現代versionドラマの一つ。コナンドイルの原作キャラクターをもとにしつつ、設定は大胆に変更されています。舞台は現代ニューヨーク、相棒のワトソンを女性に変えて(!!)、難事件を次々解明する、伝説のバディ再現(?)ドラマです!

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〈見る前の、豆知識〉編

 タイトル「エレメンタリー」※1とは、〝Elementary,my dear Watson.(初歩的なことだよ、ワトソン君)"と、ホームズ初演の俳優が言った名セリフに由来しています。

このドラマでホームズを演じる俳優のジョニー・リー・ミラー ※2は、イギリス版「SHERLOCK」を演じたカンバーバッチ※3と同じロンドン出身。しかも、舞台で共演したこともあり(2012年「フランケンシュタイン」w主演でローレンス・オリヴィエ賞 ※4を受賞)、実力を認め合ってる仲です。

ミラーがシャーロックを演じるにあたって連絡を取り合った、ドラマを見たカンバーバッチが賞賛した、というウワサもあります。

 ただ、このドラマシリーズは2012〜2019年と、ながーい年月にわたってオンエアされた人気ドラマ。全7season、154話とかなりのボリュームです。

そのボリュームに一瞬、気が引けて、おそるおそるseason1を覗き始めたところ・・。 

軽快なテンポで進むストーリー!

案外、面白くて、どっぷりハマっています。この「案外」というところが、ミソです。

ホームズ、ワトソン、兄マイクロフト、運命の女アイリーン、宿敵モリアーティなどの有名な「キャラクター」は登場しますが、原作とはかなりイメージが違います。

まったく新しいドラマに出会ったつもりで、ニューヨーク市警の顧問(season1の最後の方で、ワトソンがconsulting  detectiveという名称を使っています)の2人を見れば、楽しめると思います!

 

ホームズは、薬物依存症の治療のためニューヨークにやってきて、ワトソン(史上初の女性ワトソン! 演じるのは、ルーシー・リュウ※5)と出会います。最初2人は「ヘロイン依存症から離脱を目指すクライエント」と「見守るお目付け役」という立場なので、反発し合うことも、しばしば。でも、やがて互いの能力を認め合い、ワトソンは「探偵の弟子入り」をし、かけがえのない相棒となって、数々の難事件を解決し始めます。

 

season1の終盤で、ホームズは心身の回復と情緒の安定を見せ始め、ワトソンもまたホームズとの出逢いにより人生の迷路から抜けて、新しい仕事に邁進し始めます。

サブタイトルをつけるなら「再生編、友情の芽生えニューヨーク編」でしょうか。

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主要人物は、season1でほぼ勢ぞろい 

登場人物の設定でユニークなのは、やはり相棒ワトソン。優秀な心臓外科医(女医)だったけれど、ある手術の失敗から自主的に医師を辞め、「薬物依存症患者の回復支援者」に転身しています。友人からは「医者を辞めても、人の命を救っているのがえらい」とか褒められていますが、嬉しそうではありません。彼女もまた、ホームズと同様に、将来を考えあぐねている迷い人です。

ワトソンとの出会いをアレンジした?ホームズ父は、season1では姿を見せませんが、富豪の実業家らしいです。兄マイクロフト(エピソード7・8に登場)は、レストランを世界各国で数多く経営するセレブらしいですが、かつて婚約者を弟に奪われたこともあって、今も弟との仲はあまり良くなさげ。

宿敵モリアーティは、エピソード20以降に登場します。アイリーンとの関係も明らかになり、シャーロックには衝撃の連続です。ある意味、今回のワトソン以上に意外な!設定でなので、びっくりすること請け合いです。

 1話ごとのテーマとしては、①嫉妬・憎悪・不倫・横領・遺産相続など「古今東西共通の負の感情」をタテ軸に、②IT技術・遺伝子研究・情報操作・最新医療の知識、数学・化学・環境分野など各種学問の新説や発見などの「現代っぽいキイワード」をヨコ軸に組みあわせ、そこにホームズの薬物依存症との葛藤というスパイスを加えています。

 

ホームズの長い台詞vsワトソンの指摘の鋭さ 

ホームズは、とてもaggressiveでactiveな自信家。捜査のため、犯人を見つけ出すためなら、多少荒っぽいことも平気でやってのけます。そのため、ワトソンやニューヨーク市警の親しい警官はいつもハラハラし通しです。

ホームズは「おれの頭は、ヒトより高速で回転する」と豪語し、その豊富な知識と優れた観察眼により、被疑者の習性・行動・隠し事などをすばやく見抜く能力に長けています。自尊心が強く、自分の過激さが招く過ちを認めたがらず、苦手なこと(例.謝る、礼を言う、負けを認める)を強いられそうなときは、決まって「そんなことをする意味が、どこにある?」と、強烈な負け惜しみを言います。

それに対して、女性ワトソンは、たしなめるでもなく否定するのでもなく、ただ「相手を認めるだけじゃ、いけないの?」と、端的な指摘をします。ホームズは、グゥの音も出ません。

 

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このドラマのシャーロックは、「8歳(6歳?)で寄宿舎制の学校に入れられて、孤独だった。よくいじめられた」と何度もぼやいているので、もしかすると母親的な愛情=自分は‘ただそこにいるだけで、無償に愛される存在’だと感じる時期が、極端に少なかったのかもしれません。ワトソンは、ホームズの言葉を遮ることなく傾聴し、受容してくれます。

 頭でっかちの男を射止めるなら、この手があるんだー(笑)と、参考になります。

(このドラマの2人の関係は、少なくともseason1では恋愛関係ではないですが。)

 

season1の中盤以降、ホームズはワトソンに心を許すようになり、言葉も態度もどんどん変わってきます。ワトソンが「初めて出会ったころとは、別人のようね」と褒めると、ホームズは「君が、例外なんだ」と答えています。

ワトソンの医学的な知識が、ホームズの推理をおおいに助けることもあり、そういうとき、彼は直立不動の姿勢で、いかにも言い慣れない様子で言葉を選びながら「お礼を言いたいのだが、あまりに寒くてうまく言えない」と語ったりします。

ときどきホームズが、かわいく見えてきます!

 

最後は、邦題でナゾとき

season1の邦題を見ると、ほかの映画や小説へのオマージュというか、なかなか面白いものがあります。原題と違っても、内容を象徴するタイトルで視聴者にイメージが伝われば良いのでしょう。参考までに記載します。

 

エピソード9「瞳の中の暗殺者」 ※原題「you  do it  to  yourself」

↑2000年「名探偵コナン」の映画タイトルと同じ。

エピソード10「ダイヤモンドは永遠に」※原題「the Leviathan」。ドラマ中の最新式の金庫の名称。

イアン・フレミングの長編小説007シリーズ第4作を映画化したもので、日本でのタイトルが全く同じ。映画の原題はdiamonds  are  forever。ショーンコネリーが007を演じた最後の作品。

エピソード12「Mの悲劇」 ※原題「M.」

エラリー・クイーン推理小説「Yの悲劇」「xの悲劇」(1932年発表作品)のもじり。

エピソード16「容疑者ベルの献身」※原題「details」

東野圭吾の小説2005年、映画2008年「容疑者Xの献身」のもじり。ニューヨーク市警でホームズ&ワトソンの数少ない味方、ベル刑事が中心のエピソード。

エピソード21「殺しのライセンス」※原題「a  landmark  story」

↑007は「殺しのライセンスがある」と言われる。ホームズ役のミラーの祖父が007に出演している。

エピソード22「復讐するは我にあり」※原題「risk  management」

佐木隆三市の小説、映画「復讐するは我にあり」1979年。

 

 

 

 ※1 elementary  「新英和中辞典(研究社)」によれば、意味は「基本の、初歩の、初等の」であり、高校基本語彙レベル。✳︎マークが1つ、付いています。

※2 ジョニー・リー・ミラー イギリス人俳優(1972年生まれ)。祖父は、映画007でMを演じたバーナード・ミラー。両親も共に演劇関係者。最初の妻は、アンジェリーナ・ジョリー。現在は再婚して娘が1人いる。

※3 ベネディクト・カンバーバッチ イギリス人俳優(1976年生まれ)。TVドラマ「SHERLOCK」主演(2014年〜)で、エミー賞テレビ映画部門主演男優賞などを受賞。主な出演作は、映画「スタートレックイントゥダークネス」「イミテーション・ゲーム」など多数。レスター大学の調査で、彼にはイングランド王リチャード三世の血が流れていると発表されたこともあった。

※4  ローレンス・オリヴィエ イギリスが誇る名優(1907〜1899)。俳優として初めてナイトの称号を与えられ、一代貴族にもなった。生涯3回結婚。2度目の妻が「風と共に去りぬ」のヴィヴィアン・リー

※5 ルーシー・リュウ 台湾出身の両親をもつアメリカ人(1968年生まれ)。黒髪、アーモンドアイが印象的で、アクションもできるアジア系の女優。映画「チャーリーズエンジェル」など、数多くの映画やドラマに出演。