階層社会を、ちょっと覗き見
〜「モース、刑事やめるってか??」〜
case9は、こちら
基本、このブログでは、犯人が誰かなどのネタバレはしてません。が、前回のエピソードcase 9のラストについてだけは、余りに「うへえ」だったので、ちょい書きます。↓
前回、主人公の刑事が留置場に収監されるという、衝撃のラスト! 本人もびっくりしたでしょうが、見ているこっちもびっくりでした。
さて、今回は、モースが刑事を続けるかどうかの瀬戸際エピソード! どーすんでしょーねー、ということで、「あらすじ」と「感想」をブロックで分けて書いてみます。
●あらすじ
モースは、1ヶ月過ぎてやっと留置場から解放されました。サーズディ警部補も、まだ体調に不安あるようですが、現場復帰。
肝心のモースは、警察署に出勤してません。退職願を警部補に提出して、自宅にも戻らず。大学同期の友人のツテで、湖畔の別荘コテージを借りて、毎日ウツウツとして楽しまず、って感じです。いや、新しい出会いもそれなり充実しているようですが。
case9まで仲良しだった看護師の彼女とは疎遠になり、すでに「元カノ、元カレ」モード。別荘コテージを訪れたサーズディ警部補に「戻ってこいよ」と言われますが、「辞めさせてください」と答えてました。やさグレたモースですが、サーズディ警部補の「オレは一生、警官だ」という覚悟のほどを聞いて、考えるところがあった様子です。
パリピーな日々
モースの大学同期は、ハイスペックな男性だらけ。コテージを貸してくれた友人アンソニー紹介の同期も、リッチで爵位のあるブルース。元モデルである妻のキャシーにも上から目線のタカビーで、夫婦仲は不穏な感じです。それでも上流階級の人々は「平和」を取り繕いつつ、大勢で優雅な湖畔ピクニックランチ。モースも参加してます。
モースは夜もアンソニーに誘われて、カジノへ。そのカジノの経営者、どことなく影のある謎めいた人物、ビクスビーとも知り合い、けっこう気が合う感じです。
彼からモースは「old man(=‘へい、お兄さん‘的な親しみを込めた呼びかけ)、おれの片腕になってくれないか?」と誘われるほどです。 ↑この呼びかけ方法、のちのちヒントなので注目!です。
きちんと正装して、カジノに遊びに行ったりする、モースがパリピーな日々、、、。
カジノ経営者ビクスビーは、ブルースの妻キャシーに自分の気持ちを訴え、迫ります。なにやら2人の間には、ヒミツがありそう!
移動サーカスの人々のヒミツ
湖畔近くで、事件発生!で、モースも現場検証に参加。
殺害された女性の行動をたどっていくうちに、モースは移動サーカスのマジックショーのボスに聞き込みしたところ、何か隠しごとがあるのを感じます。
おまけに、そのサーカス会場で、ビクスビーを見かけます。でも本人は誤魔化すばかり。
その間に、質の良くないヘロインのせいで大学生ジェラルドが死亡。移動サーカスのメンバーの1人が、行方不明。さらにはビクスビーが自死したのではないかという疑いが高まり、とうとうモースは、これら一連の事件に本格的に取り組むことを決めます。
そのあと、死体はビクスビーではなく、カジノでの大負けを苦にしたロディに違いないと語る、ビクスビーが現れて、一同びっくり。
・・・あやしげなことが続き、モースは再び移動サーカスの聞き込みを重ねて、真相にたどり着くのです。
●感想+α ※ネタバレあり
前回、刑事でありながら殺人犯の汚名を着せられて、収監されたモース。そのキャリアと彼自身の心情は、めちゃくちゃ傷ついたよねえ・・・。解放されても失意の日々をすごすモースは、ちょっと痛々しく見えました。
そんなモースを説得するサーズディ警部補の、終始一貫した姿勢は、ものすごく尊敬できます。さらに、「自分のミスで、あなたを危険な目に合わせた」と謝るモースにかけた言葉が、「でも、おまえはあの現場に来てくれた。おれは、その勇気を一生忘れん」です。こういう上司に出会えたら・・・って、思ってしまいました。いや、あんな修羅場はイヤだけども。
さて、タイトルの「表と裏のバラッド」というのは、おそらく、ひなたに生きる人々と、日陰に生飾るを得ない人々との対比を暗示しているのだと思います。重要な鍵は、コイントスとか、Cのつく言葉。チャーリーとか、コンラッドもCで始まりますよね。
ビクスビーやキャシー、あるいは最初に殺された赤毛美人のジニーも、もう少しひなたに生きたいと願っていただけなのに、・・。
最後に判明する犯人も、日陰に生きることを、父親に決められてしまった、悔しさとか、悲しさとか、やるせなさとかが、いっぱいあったでしょう。
ひなたしか知らないブルースのような人物には、その思いが分からないのでしょう。
●おわりに
「刑事モース」は、シーズン3(case 10〜13)に入って、監督が女性に変わったようです(俳優陣と脚本は変わっていません)。そのせいか、シーズン1や2に比べると、いっそう女性の描かれ方が細やかに、かつシビアになったように見えます。
今回で言うなら、キャシーの生き方です。過去の環境や恋から逃げ出して、上流階級との結婚でハシゴを登りきった感がありますが、果たしてそれが幸福だったのかどうか。
途中でビクスビーやブルースではなく、モースにすがったりするけど、それは成就せず。結局、ブルジョワジーの生活を捨てません。
周囲から反発されても、彼女が守りたかったのは、定住なのかな。
ラスト、モースには「この世に本物のマジックはない。愛以外は」と言わせてますが、果たしてモース自身が心底そう思っているかどうかは・・・case13まで見てから考えましょう(case13の邦題が「愛の終止符」ですから)。