▷日常生活の中で浮かぶ、由なきことを、
サ行のキイワードに言寄せて、綴ります◁
「シ」 職業病
編集者だった時代が長かったせいか、つい、誤字が気になります。一種の職業病です。
私がいた職場では、文字と言葉の語用をチェックするのは、もっぱら校正者の専門技能でした。編集者は校正者や校閲部の指摘を受けて、最終的にその指摘を採用するかどうか、判断する役目でした(今は、おそらく人件費コスト減と時短のために、編集者には校正者との兼務が求められていますよね?)。
そんな昔とったキネヅカレベルですが、ごめん、書きます。
昔と今(昨今)では、「間違えやすい」パターンが変わっています。
昔は、字形が似ていると間違えやすかったように思います。原因は、モト原(大元の原稿)の見間違いや誤読でしょうか。
・(誤)芸者で賑わうスキー場 → (正)若者で賑わうスキー場
・(誤)苦い女 → (正)若い女
・(誤)シェルマット → (正)ツェルマット
「芸者で賑わうスキー場」や「苦い女」も、あり得ますが、前後の文脈と合わせて考えると、「若者で賑わうスキー場」「若い女」が正しいと思います(前者は、若者向けの情報誌、後者は遺伝について書かれた文庫本の中で出合いました)。
あ! 出会い(出逢い)と出合いは違う、んだそうですよ。ヒトと出会う(出遭う)、モノと出合う、が正しい使い分けだそうです。昔、校正の方から教わりました。
今(昨今)は、同音異義語の間違いが増えているように思います。文字は、前後の意味も考えて選ばないと「あれ?」ということになりかねませんね。
・(誤)危機一発 → (正) 危機一髪
・(誤)小数精鋭 → (正) 少数精鋭
・(誤)短刀直入 → (正) 単刀直入
・(誤)不妊していた刑事が → (正) 赴任していた刑事が
「危機一発」は確か、某スパイ&アクション映画の邦題をつけるときに考えられた物だと記憶しています。銃弾の一発と掛けているので、非常にうまいですよね。けれど、モトネタは「一髪」が正しいのです。
「不妊していた刑事」は、つい最近、ある動画配信サービスで見かけた作品紹介文の一部文面です。内容を見ると、その刑事は男性であり(男性不妊という言葉もありますが)、物語は「イギリスから来ていたチャーリー刑事が殺害され、、」ということでした。ゆえに「赴任」が正しいと思います。
誤字脱字、言葉の誤用を見ていくと、けっこう奥行きの深〜いものです♪