元編集者のナゾとき☆日記

ミステリー系のTVドラマ・映画・漫画の感想や生活実感コラムをつれづれなるまま書きます。

Book Review「劇場版シグナル〜長期未解決事件捜査班〜」

映画の二次元version! 文庫本で「シグナル」を楽しむ

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 「劇場版シグナル 長期未解決事件捜査班」宝島社文庫 680円

 

映画を見る前に、書店で見つけて文庫本を買いました。ドラマ知ってても、読んでみて初めてわかったこともありました。映画見てからでも、役に立ちそう。という感じで、ホドホドにおすすめします。

 

対策本として、読める

ネットで本や漫画を買うときは、指名買い。当然、知らない本は買えません。でも実店舗に行くと、「へえ、こんな本が出てるんだ」という発見があります。

 

文庫本「劇場版 シグナル」は、その存在が「へえ」ではありましたが、一見して、映画の宣伝の一環で出版された本だと感じます。読まなくてもいいかと迷いましたが、そのとき、この作品の個性的な設定と自分が抱える課題を思い出しました。

 

「シグナル」は、「つながるはずのない無線機が、現在と過去の刑事を結びつける+その過去の刑事を慕う3人目の刑事も共に、犯罪者と犯罪被害者を無くす(減らす)ため、捜査する」が、基軸です。

キャッチフレーズは「諦めなければ未来は変わる」で、未来が変わるために、ときおり過去まで新しく記憶と記録が更新されます。変えられない過去の「事実」もあり、それと入り混ざります。

 

そんな突拍子もない(失礼!)設定です。読むと、時系列がぐるぐるします。

過去と現在の刑事が交信するとき、現在は23時23分と限定されていますが、過去では昼のときも夜のときもあります。また、時間軸が歪んでいる(三枝健人・談)のか、「現在」が前の交信時の8年後なのに、「過去」は3年前に逆行していることもあります。

 

私のような、一昔前の蛍光灯(=ツキが悪い、点灯するのに時間がかかる)アタマでは、このへんの「事実」に対して脳内のデータ更新が追いつきません。ぼーっと見ているつもりはないのですが、ときどきストーリーに置いてけぼりを喰らいます。

  

本という形態の便利なところは、あちこちページをひっくり返して、確認しながらマイペースに進められるところです。

それこそが、もしかすると時間軸をワープするドラマ「シグナル」の構造にフィットした、最強の 見方(味方?)なのではないか! と思います。

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SFとファンタジーの味つけされた、刑事モノ

タイトル初見の方にお伝えすると、ドラマ「シグナル」は、もともと韓国で大人気。2012年のスタート以来、あちらでは刑事モノというより、ヒューマンドラマとして評判高いのだとか。

 

2018年に日本版が制作され、連続ドラマ化(放送済みエピソードは10本※1、カンテレ制作、フジテレビ系列)。2021年4月には、日本オリジナルの脚本で、映画が封切られることになり、ほぼ同時に文庫本も出版されています。

  

今回のオリジナルストーリーでも、中心人物は、現在に生きる三枝警部補(演じるは、坂口健太郎さん)と、過去にいる大山巡査部長(北村一輝さん)。過去に大山巡査部長の部下だった桜井班長(現在の階級は警部、吉瀬美智子さん)が、現在サイドでタッグを組んで最強の敵と戦います。

 

過去と現在の刑事を結ぶキーアイテムは、バッテリーの切れた無線機。

無線機が、久しぶりに過去からの声を三枝警部補に届けたのは、2021年1月末のこと。

相手の大山巡査部長は、2009年12月1日にいます。

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2021年1月25日に政府高官がナゾの‘交通事故‘で死亡した案件を調べていた三枝警部補(文庫本では「健人」※5)は、「2001年のバイオテロ事件」と「2009年に起きた2件の政府高官の事故死」は、「2021年の政府高官の‘事故死‘」に関連があると、大山に話します。

 

そこから事態は目まぐるしく展開します。

 

文字は、見た目で「雰囲気」作れる

2021年の現在編は、殺人事件が立て続けに起き、おかげで健人は追う立場から追われる立場になり、逃げまくります。濡れるわ、撃たれそうになるわ、刺されるわ…

文庫本のなかでも、文章のスピード感がやばいです。たとえば、p163では、全部の行が1行ごとに改行です。文末は「・・た」「・・た」「・・た」の連続でリズム感よく、文字通り、たたみ込むような印象です。臨場感をUPさせて、まるで見てるように読める。

 

この本の編集者やライターさんはたぶん、こういう文字の羅列の見た目も意識していると思われます。

 

ヒトは、本を黙読する間もスーハー呼吸しているわけですが、文字のセンテンスが短く、小気味よく、上記のようなタタタの文末が続くと、呼吸が浅く短くなりがちです。知らないうちに、ハッハッハッとさせられます。文字通り、息詰まるように。場面の切迫感を出したいとき、このやり方は有効です(と思う)。

文字が横組みの本を読むときは、不思議と、この感覚がないです。私だけかもしれませんが。

 

なお、この本は、書籍にしては改行が多いです。本文はほぼ3行以内に改行されています。この本は、ふだん本を読み慣れない人にも、見やすく読みやすくしたかったのかな。

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セリフが多く、しぐさやアクションに関する表現が非常に多いのも、特徴です。登場人物の感情の起伏などの表現が少ないのは、やはり映像で確認してね=「映画を見てねー」ってことだろうと推測してます。

 

でね。

この本、目次がない! 登場人物の説明(人物紹介)ページもない! この本から「シグナル」の世界に入る人を、想定していない! のは、惜しい。目次をつけるのが難しいとは思うけど(何ページから何ページまで、きっちり2009年とか言えないから)、残念。

  

読んでから見るか、見てから読むか

↑かなり前の、角川映画のキャッチフレーズです。

 

今は、読んでから見る派を想定しています。

連ドラ「シグナル」はもとより、各種ドラマのファンだという場合は、配役にも思いをはせながら、本が読めますね。

 

北村一輝さんは、映画公開の直前、2021年1〜3月までドラマ「天国と地獄」※2で、カワハラ(通称セク原)警部補としてお見かけしましたけどねー。 とか、

 

同じく北村さん、連ドラ当時は前髪たらして、全般に薄着でカジュアルファッション、意図的にジグザグ走りする熱血刑事ぶりで、若返ってますけど、ちょーっとウエストが気になりましたねー。映画では走れてますかー。 とか、

 

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吉瀬さん扮する桜井班長、連ドラや映画ポスターで愛用のモスグリーンのスタジャンは、連ドラ初回で大山刑事が身につけてたのと、クリソツですねー。 とか、

 

坂口健太郎さん、身長183㎝、スリムで知的nobleでカッコよくて、元祖「塩顔王子」※3の面目躍如ですねー。かつて、ドラマ「重版出来」※4で、長い階段を一気に駆け上がるシーンがあり、そのときも足長を生かしたスススって動きで、超ステキでしたー。 とか、書いてしまいましたが、

 

本の紹介記事ですから、ヴィジュアル映像系の話は慎もうと思います(笑)。

 

 ※1「連続ドラマ/シグナル」 現在、FODやAmazon primeなどの動画配信サービスで見ることもできる。

※2「天国と地獄」 2021年1ー3月期ドラマの最高視聴率20.1%(最終回)を記録。放送はTBS系列。北村一輝さんは、主演・綾瀬はるかさんと対立する警部補の役。

※3「塩顔王子」 「しょうゆ顔」「ソース顔」という分類にはまらない、新テイスト。ちなみに、大山刑事扮する北村一輝さんは、映画「テルマエ・ロマエ」に出演したとき「濃い顔」に分類されていた(対義語は「平たい顔」)。

※4「重版出来(じゅうはんしゅったい)」 2016年4−6月期に放送。TBS系列。原作は同名の漫画(小学館、作・松田奈緒子さん)。坂口健太郎さんは、主人公と同じ出版社に勤めている社員で、仕事に目覚める営業部員を好演していた。

※5「健人」 アメリカンコミックス出身のスーパーヒーロー、「スーパーマン」の地球上の氏名はクラーク・ケントです。偶然でしょうか。

 

パラレルワールド感は、やや減 

過去と現在の話が交差するパラレルワールド感は、今回のエピソードの方が、連ドラのときより分かりやすいです。今回の本は「過去が「2009年〜2010年」に絞られている感じなので。

(それでも、登場人物のうち、あの花さんが・・とか、あのミチルさんはどうして・・とかは、本からは解読しきれませんでしたです)

 

物語の中では、「事実」や「記録」あるいは「健人の記憶」の一部が変わっていき、

(「変わる事実」と「変わらない事実」があり、一読者としては、その辺が少し、ご都合主義かな〜と思いました。面白い設定だけれど、終盤近くに「とても長いリアルな夢を見ていたような・・」って健人が思うのは、ちょっとズルい…ような(笑)

 

それら変更内容について、周囲が全てすぐに適応しています。

(健人の記憶が変わっても、他の人の記憶や歴史の改変まで操作できないでしょー。とか、個人的には思いますが、まあ、フィクションとして愉しみます)

 

矛盾はいろいろあるけれど、あまり深掘りせず、とりあえず健人と美咲と大山が元気ならいっか〜。

 

おわりに

今回、文庫本を読みながら、脇でいろいろな検索をしました。

時間軸を自由にあやつる「シグナル」ですから、「殺人の時効」「犯罪被害者」などをキーワードにして、調べてみると・・・

 

日本で殺人の時効が撤廃されたのは、2010年4月27日(改正刑事訴訟法)です。それによって、1995年4月28日以降に発生した殺人事件の時効がなくなったそうです。

また、「犯罪被害者等基本法」は2004年12月1日に成立しています。

 

文庫本「劇場版シグナル」では、犯罪被害の遺族であるミチルにわりと重要なセリフを言わせています。

「もし過去を変えられたらって、何度も思った。でもそれは無理」「被害者遺族にとって一番つらいのは、時間を戻せないことです(以下略)」

 

ちょっと切ない場面もあります。

 

でも、「劇場版シグナル」は、過去から変われるよう、大山刑事が孤軍奮闘していますけどね。

 

終わりの終わりに。

最大のナゾのひとつである「使えない無線機が、過去と現在の刑事を結びつけ、交信できるのはなぜか」について。

 

日本では、東京スカイツリーが、2012年2月29日に完成し、同年5月から電波塔として開業しているのも「シグナル」に影響したかな? なーんてね。

 

韓国で「シグナル」が始まったのが、2012年。そう、そこから、不思議な電波???が、日本でも飛ぶようになったのか〜〜〜  なーんてね♪

 

ナゾはナゾのままにしておく。のも、「シグナル」の楽しみ方の一つです。